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 随分と前のことであるが、ある城郭研究会から城についての原稿を依頼されたことがあった。そこで城のある風景についてエッセイを寄せることにした。その時の話を少しばかり・・・。
 城には大阪城や姫路城などのように何層もの天守を持つ立派なのもあれば、藪に覆い尽くされその痕跡さえ定かでない怪しいものまで様々である。全国には城跡と呼ばれるものは数多とあるが、後者の方が遥かに多いのは言うまでもない。
 それでもそこには独自の地域の歴史があり、今を生きる元の方々にとっては少なからず誇りとなっているように感じられる。さて、歴女なる新たな言葉を耳にする昨今であるが、若い女性にとってはこうした過去の遺構、そして当時を懸命に生きた戦国武将の姿は新鮮に映るのであろうか。
 ともあれ先へ先へと急ぎ煽られる現代社会は息苦しく、行き場のない閉塞感ばかりである。そうした時に過去を振り返り、先人の生きざまに学ぶのも悪いことではない。
 話が少しばかり逸れたてしまったが、城のある風景とは何故か落ち着く。そうした話を書いた事を思いだして、ここに少しばかり綴ってみよう。
 城のある風景の歌は実に多い。有名なのはやはり「荒城の月」で、あの情緒ある詩には感じ入るものがある。だが、それはだいぶ大人になってからの事であって、恥ずかしきながら「工場の月」として煙もくもくの、「三池炭鉱の月」のイメージであったのを白状しておく。
 さて、それはさて置き、小柳ルミ子の“格子戸を潜り抜け、見上げる夕焼けの空に、誰が歌うのか子守唄、私の城下町”も素敵な曲である。それに、さだまさしの「案山子」も地方出身の者なら、心の琴線に触れるものがある人は多いのではないだろうか。地方から右も左も分からぬ都会に上京し、ふとした瞬間に思いだす故郷の景色。そこには城から見下ろす生まれ育った街並みがどこまでも広がっている。
 「元気でいるか、街には慣れたか、友達できたか」と気遣う親の心配。そして「寂しかないか、お金はあるか、今度いつ帰る・・・」と続くが、愚かな息子であった私はお金の無心ばかりしていた記憶がよく残る。そしてこの後に、「城跡から見下ろせば蒼く細い川、橋のたもとに造り酒屋のレンガ煙突」と続く。
 私はこれまでにいろんな土地を訪れ、こうした風景を眺めてきた。それは日常的で平穏な営みの中に培われていた。しかし、それがあっけなく奪い去られる映像を目の当たりにした。あの平成23年3月11日はまだ博多におり、遠く東北の惨事をTVでもどかしく眺めていた。
 それは、まるで映画のワンシーンのようであった。しかし日増しに増え続ける犠牲者の数と、その哀しみに懸命に耐え生きようとする残された人々の姿に、現実の惨さを思い知らされる事になった。
 それが何の縁があってか、九州から仙台に移り仕事をすることになった。私の仕事は遺跡の発掘調査である。現地で作業を手伝って頂く方々の中には、被災された方も多かった。それでも自分ら郷土の歴史に興味を持ち、夏の盛りから雪のちらつくこの年末まで共に過ごした。
 その遺跡からは平安時代の梵鐘を鋳込んだ遺構が発見された。要するに寺で撞く鐘を造った跡である。だが鐘などそう頻繁に造るものではない。ところがこの時期に鋳造しなければならない事態があった事が文献には残されていた。
 貞観11(869)年に東北地方一帯を大津波が襲ったのだ。時は平安時代で、この遺跡は陸奥国分寺に隣接した遺跡である。つまりこの辺りも壊滅的な被害を受け、復興の鐘を造る必要性が生じたのである。
 奇しくも震災のあった年に、鐘そのものは現存しないものの姿を現してくれたのには不思議な縁を感じずにはいられなかった。
 またまた話が跳んでしまったが、とにかく私たちは連綿とした時間軸上に存在しているのだ。そして心の何処かで原風景なるものを大切に思い、次の世代に繋いでいかねばならぬもののようである。
 あの「案山子」がたまにラジオから流れてくると、なんとも切ない懐かしさに胸が締め付けられるものである。故郷を遠く離れればこそ大切にしたい風景が、そして家族や旧友の顔が思い出されるのは何も歳を重ねたせいばかりではないだろう。
 どうか被災を受けた方々が、少しでも早く安らぎある元の風景を取り戻すことを祈ります。
 仙台城から城下を見下ろす伊達正宗像
岐阜城天守閣
沖縄 中グスク

 
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2011.12.31 弥勒堂開設
 あまり良い年だったとはいえない平成23年。それも間もなく終りを告げようとしています。
 新たなる年が明るい希望の持てるものであればと願い、またそうした身の周りの日々雑感を綴っていけたら・・・。
 そう願いこのブログの設定に四苦八苦しながら、ようやく文章を書き込める体裁が整いました。


それでは弥勒堂開設   
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