FC2ブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
といれ2_convert_20131123002813
 『北斎漫画』に描かれた、上野の山の辻雪隠。
 突然にお腹を壊し、慌てて駆けこんだ先は、江戸時代における公衆トイレ。
 半戸の外で待つ下僕達は、あまりの臭いに鼻をつまみ、主人が出てくるのを外で待つのである。


 つい先日のこと11月19日が、世界トイレの日(World Toilet Day)という記念日であったとは、ニュースをみるまでまったく知らなかった。
 いや、知らないのは当然なはずで、何やら今年からユニセフで制定されたからしかたない。何でも世界の総人口に対して3人に1人の割合である25億人が、トイレを使うことができずに、衛生的な問題で命をおとす人が多いらしいのだ。
 特に体力のない子供や老人に至っては深刻な問題となっている。

 現代の私達の社会ではとても理解できないことだが、どうやらこれが世界の実情らしい。
 では、この日本でのトイレ事情はどのようなものであったかと言うと、かなり昔から排泄の場は意識されていたらしく、様々な文献史料からも窺い知ることができる。
 そればかりでなく発掘調査を通して、その実例も間近に見聞できるから面白い。
 折角、トイレの日が制定されたことでもあり、そうした話を少しばかりこれから何回かに分けて語れたらと思うのである。

 さて、トイレにまつわる話として、国内で最古の史料となるのに『古事記』がある。
 ここでは三輪山の大物主が、美しい勢夜陀多良姫(せやたたらひめ)を見染め、丹塗りの矢に化けて川屋に籠る姫の秘所を突いたというものだ。
 つまり矢は男性器を象徴しており、その結果として懐妊し伊須気余理媛(いすきよりひめ)が産まれた。
 これと似たようなものに『山城国風土記』があり、玉依姫が川遊びをしているところを、やはり丹塗りの矢が流れきて懐妊するのである。
 つまりここでキーワードになる場に、川があることに着目しておかねばならない。

 ところでトイレに対して様々な隠語があるのをご存じであろうか。
 日頃、口にするのは「トイレ」や「便所」であるが、なるべく直接的な行為をイメージさせるような言葉を避け「お手洗い」や「化粧直し」などと言い直す傾向もある。
 近年では「レコ-ディング=(音入れ=トイレ)」、「横浜に行く(市外局番が045=オシッコ)」など捻ったユニークな表現もあるらしい。
 登山ならばその姿勢から男性は「雉を撃ちにいく」、女性は可愛らしく「お花摘み」と、やはり間接的な表現が用いられる。
 それは何も最近のことでなく、しばし場を空けることから「憚り(はばかり)」とか、茶の湯の世界では優美さ漂う「雪隠(せっちん)」など、まだまだ沢山の言葉が古くから存在する。
 このようなひとつの施設をめぐり、様々な名称で呼ばれるのも珍しい。
 それは排泄という動物的な行為が必要不可欠なものでありながら、他者に対して穢れにも写ることへの配慮や、羞恥心に起因した心理的背景があるかのように感じられる。

 話は戻るが丹塗りの矢によって懐妊した姫の話しでは、その共通の舞台となったのが川である。
 そこに簡素な建物でもあれば川と屋(建物を意味する)をくっ付けて、「かわや=厠)」なる言葉が発生したのを想像するのはそう難しいことでないはずだ。
 つまり姫は川の側に架かる建物で下半身を曝け出し籠っていたところ、そこに丹塗りの矢に化けた神が川上から流れて来て孕んでしまったというのが、より写実的な話の展開である。
 これが現代社会であれば犯罪であり、大変な問題となりかねないが、それはさて置き古事記の記された頃の古代のトイレ事情を窺い知ることができる。
 天然の水洗式トイレが存在していたのである。

 よく気まずい人間関係にある当事者間で、「水に流す」という言葉を用い、リセットを図ろうとするが、こうした語源も多少なり厠に由来しているようである。
 だが、極めて衛生的なシステムのようにも写るのだが、ここで河川の汚染問題についても考えておかねばならない。
 現代社会における後進国のトイレ事情も、川に直接垂れ流す地域が未だに多いと聞く。
 そうなれば伝染病や風土病の感染経路にもなりかねない。
 こうしたことを憂慮して、世界トイレの日なる啓発活動が開始されたというところである。
 では古代日本のトイレも非衛生的であったかと言うと、必ずしもそうではなかったと思う。
 何故なら現代と昔の人口密度の比率や、井戸水を飲料として確保できた背景を考えると、実に合理的なシステムであったはずだ。

 ただ、明治以降に本格的に導入された西洋医学の発展で、特定の地域においてこれまで明らかにできなかった幾つかの風土病の原因に、川が介在していたという新発見はあった。
 これについてはいずれ日を改め話をすることにしたいが、とにかく臭いものに蓋をするのではなく、連綿と受け継がてきた歴史には教えられるものが数多いうことを知って頂きたい。
関連記事
スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://miroku0922.blog.fc2.com/tb.php/194-60b0c1fd
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。